自分の生き方や考え方が固定されてきたなと満足している人は、今回ご紹介する小説を読んでください。
仕事とプライベートで年間200冊以上読んでいますが、その中で私が特に「これはヤバい!」と思った小説をご紹介します。
自分のこれまでをエグッてくる小説ばかりです。
- 社会人として、きちんとやっている
- 自分は常識人だ
- 当たり前、普通が口ぐせだ
⬆こんな人達に、特にオススメです✨⬆
生き方をエグられた『月の影 影の海』
『月の影 影の海』
小野不由美:著
新潮社
表紙がとにかくカッコイイですね♡
主人公の表情の変化の理由にも注目です!
あらすじ
主人公の中嶋陽子は、家でも高校でも優等生。
そんな彼女は毎晩、化け物が近付いてくる夢を見ている。
ナゾの夢に悩ませながらも、両親や教師、そして友人の期待に応えようとする毎日。
ある日、【タイホ】と呼ばれる金髪の青年に「探した」と言われ異世界へと連れられてしまう。
しかし、異世界で【タイホ】とはぐれてしまい、守ってくれる人もいない土地で命を狙われてしまう。
なぜ、異世界に連れてこられたのか。
なぜ、陽子だったのか。
そして、彼女が命を狙われる理由とは?
絶望しきった彼女の前に、一匹のネズミ・楽俊が現れる。
ここから、彼女の運命が大きく変わっていく。
小野ワールド全開のファンタジー小説!
書評
中学の時からずっとお気に入りの作品です。
優等生で自己主張せず、ひたすら「良い子」だった陽子が、見知らぬ土地にたった一人で投げ出され、それでも生きようとする姿。
痛々しく思えるシーンや騙されてしまうシーンでは、学生時代は共感しながら、大人になった今では母のような気持ちで心配しながら読んでしまいます。
彼女の言動の変化、気持ちの変化に、自分の生き方を考えさせられました。
とにかく登場人物のリアル感が秀逸で、
異世界ファンタジーものなのに、本当にありそうな話に思えてしまいます。
上下巻に分かれていますが、辛くても「楽俊」が出てくるまで頑張って読んでほしいです!
この楽俊登場以降が、ある意味、解決編となります。
シリーズものの第1巻ですが、
ハマってしまうと全巻読んで「十二国」の歴史や謎を解きたくなるはずです!
心をエグられたシーン
楽俊に「災害も試験合格も、金運アップも神頼みはしない。災害は起きるときは起きるし、試験は勉強すれば受かる。お金も稼げば貯まる。神に祈ってどうする?」と言われるシーン。
確かにそうだと思いました。誰かのせい、神のせいにしていないで、自分で行動して、自分ができることをやろうと思えました。
裏切られ続け、人を信じることができなくなり、ネズミにトドメを刺しに行こうかと悩むシーン。内なる声が、トドメを刺せと唆しますが…
裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしのなにかが傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい。
『月の影影の海(下)』82ページ
人を信じることが怖かった時に刺さりました。裏切られるから信じない!と思っていた自分の人生観が変わった瞬間でした。
今でも、読み返すと、人を信じることの強さに勇気をもらいます。
当たり前をエグられた『消滅世界』
『消滅世界』
村田沙耶香:著
河出書房新社
あらすじ
子供を産むためには人工授精をすることが当たり前の世界。
夫婦は清潔な病院で人工授精をして子育てをするが、夫婦間での性交渉は家族ゆえに近親相姦という考え方。
そのため、夫婦はそれぞれに外に恋人を持つことが常識となっている。
自然妊娠は動物と一緒だという考え方が広まっている中で、主人公の雨音は自然妊娠で産まれている。
セックスが失われつつあるのに、彼女は人と恋をしてセックスを重ねる。
雨音と彼女の夫・朔は、現代の制度に疲れて、実験都市・千葉県に移住することを決意する。
そこは、全ての子供が「子供ちゃん」、全ての人々が「おかあさん」と呼ばれている。
そして、男女共に人工授精で妊娠することを管理されている都市だった。
彼らが選択した道とは・・・。
感想
夫婦が「家族」という単位になったがために、互いを性的対象として見ない。
セックスは動物がするもの、ヒトは科学的妊娠するものという価値観。
それらが当たり前の世界線で、セックスは日常生活から少しずつ姿を消していくのが不思議だった。
性欲って人の三代欲求の一つなのに、それが消えていく人々の淡白さ。
いつかそうなってしまうのかな、と思ってしまった。
葬儀会社による葬式、病院で死ぬことが当たり前になった私たちが生きている現代。
「死」が私たちの日常生活から遠ざかって数十年…村田さんワールドでは「性」すらも日常から遠ざかり、システマチックになってしまうらしい。
それが本当になってしまいそうで、いい意味で不気味で、理想の世界に思えた。
「今」私たちが正常だと思っていることは、昔の人にとってはおかしいことで、未来では狂っていると思われる可能性が高い。
そんなことを考えさせられる小説だった。
常識をエグられたシーン
時代に逆行してセックスを楽しんでいた雨音が、朔と自分達の子供じゃなくて、みんなの子供を作ろうと実験都市に移ることを決める。
それを母親に伝えに言った時の言葉。
時代は変化してるの。正常も変化してるの。昔の正常を引きずることは、発狂なのよ。
140ページ
「昔はこうだった」とか、「今はこうだから良くない」とか、言ってしまっている自分に気付かされた。
時代も正常も変化しているのだと、幼い頃からの刷り込みを脱ぎ捨てた雨音から教えてもらった。
そして、この場面から、雨音は「正常」について考えていく。
読んでいる私も、それに釣られて「正常」や「当たり前」について考えていく。
考え方をエグられた『川のほとりに立つ者は』
2023年本屋大賞第8位
『川のほとりに立つ者は』
寺地はるな:著
双葉社
あらすじ
カフェ店長として働いている原田清瀬は、恋人の松木圭太が意識不明の重体だと警察から連絡を受ける。
友人の岩井樹と歩道橋で揉み合いになり、2人とも落ちてしまったという。
清瀬がワガママを言っても、一方的に怒った時も怒らない松木がなぜ?
清瀬は、松木が秘密にしていたことと関係があるのではないかと考え、彼の部屋で見つけたノートについて調べ始める。
そこで彼女が見た、松木の秘密とは?
そして、秘密を知った清瀬が下した決断とは?
感想
主人公の清瀬の「自分は正しい」と無意識に思っているような行動と言葉たち。
自分もあるかもしれないと思い、読みながらドキリとした。
相手のことを深く知っていても知らなくても、その人の行動の裏にあるものを想像することは大事だと思った。
自分の常識に当てはめて考えることの危うさを感じ、人への教え方や話し方を考えることの大事さを再認識した。
人は、身近な他人を知ったつもりになっているけれど、それはその人の一部分にすぎなくて、相手の全部を知ることなんてできないのだと、この小説を通して学んだ。
考え方をエグられたシーン
清瀬が松木に、職場にいる困った部下について話すシーン。
部下の品川さんが、仕事でミスを繰り返したり、頑固だったりすることを愚痴っている清瀬に対して、松木は心の中で下記のことを考える。
誰もが同じことを同じようにできるわけではないのに、「ちゃんと」しているか、していないか、どうして言い切れるのか。
143ページ
生徒や職場の人に対して、自分無意識に不満に感じていたことを、松木の内心の言葉がエグってきた。
自分基準の「ちゃんと」しているかを、勝手に考えて判断してしまっていた。
相手と向き合って話すことの必要性を突きつけられた。
全ての謎が分かり、自分の今までを振り返った清瀬が反省しているシーン。
手を差し伸べられた人間はすべからく感謝し、他人の支援を、配慮を、素直に受け入れるべきだと決めつけていた
213ページ
この文章を読んだ時、支援する側とされる側は、支援をする側に決定権があると無意識に感じていたのだと、心がグッと詰まり、脳がハッとした。
自分自身の痛い部分、見たくなかった部分を見せてきた一文だった。
本書は、自分の「ちゃんと」することや「常識」に囚われていた私に必要な小説だった。
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プロの読み手の方が、朗読してくださっているので、真のながら読書が可能です。
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まるで読み聞かせをしてもらっているような感覚になれるので、私は眠れないときにも使っています。
読むのはちょっと…という方は、聴く読書で耳から音で考え方をエグられる体験をしてみましょう!
まとめ
人それぞれの考え方や価値観、人生観がありますよね。
今回紹介した小説は、自分が持っていたそれらをえぐり出し、かき混ぜてくるものばかりです。
このブログを読んで「自分はこんなことはない」と高みの見物をしているアナタ!
自分の偏見や思い込みを見ないふりしていませんか?
今回紹介した小説を読んで、自分がフタをしていた偏見や思い込みをエグられる快感を味わってみませんか?
新しい自分に出逢えるチャンスかもしれませんよ。
良かったら応援よろしくお願いいたします。
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