カッコいい男と女が出てくる小説!直木賞受賞作品『しろがねの葉』の美しさ

2023年1月に第168回直木賞・芥川賞の受賞作品が発表されました。


純文学で新人作家さんの雑誌掲載が選ばれる芥川賞エンターテイメント性が高く中堅作家さんの既出本から選ばれる直木賞と筆者は認識していますので、いつもとりあえず直木賞から読み始めてしまいます。


読書が苦手だという人にも読みやすいのは、直木賞の方ではないでしょうか。
今回の直木賞は『地図と拳』『しろがねの葉』が受賞しました。

どちらも歴史小説ですが、今回は受賞作品の一つである『しろがねの葉』(千早茜:著)について書いていきたいと思います。

こんな人にオススメ!
・歴史小説が好きだ
・江戸時代が舞台の小説が読みたい、読んでみたい
・強い女性が主人公の物語を読みたい、読んでみたい
・有名な賞を受賞した小説を読みたい

ぜひ、最後まで読んでいってください。

目次

『しろがねの葉』とは?

著書『しろがねの葉』
著者名:千早茜
出版社名:新潮社

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あらすじ

戦国時代。
主人公ウメは、貧しい農村の生まれだ。
生まれながらにして夜目が利くウメは、気味が悪いと言われながらも自分の安心できる場所を探して育っていった。
ある晩、村の貧しさから父母と弟と村から夜逃げすることになるが、ウメは家族と生き別れてしまう。

そして代わりに迷い込んだ銀山で出会ったのは、稀代の山師と呼ばれた喜兵衛という大男だった。
彼はたまたま銀の出る場所を見つけたウメを、幼子は男も女も関係ないと言って、自分の手子(下働き)にして一緒に住むことを決めてしまう。
ウメは喜兵衛の身の回りの世話をしながらも、間歩と呼ばれる銀を掘るための穴に雑用として入るようになる。
いずれは銀堀になりたいと望むも、同じ時に手子として働いていた隼人の方が先に出世していく。

時は流れ、時代は江戸時代になる。
徳川の世になり、銀山は徳川の所領となって、銀を掘るにも全て許可が必要となった。
そんな制度に喜兵衛は背を向け、やがて銀山にも足を運ばなくなっていく。

年頃になったウメの身体にも、女性としての変化が訪れて・・・。

ウメという少女から女性へと変化していく様子と、彼女のもとへ来ては去っていく男たち、時代の変化を描いた歴史小説。

主な登場人物

ウメ


村から逃げる際、家族と生き別れてしまった少女。
闇と銀をたくさん吸った蛇の寝ござと呼ばれる美しい葉を偶然手にしていたところを見咎められ、山師の喜兵衛に助けられる。
5歳から育ててくれている喜兵衛のことを慕っている。

喜兵衛


稀代の山師と呼ばれている。
銀脈や特効薬のある土を探すのが得意で、誰にも教えていない秘密の場所を知っている。
戦争が起きると、銀堀で稼いだお金を使って商売をしている。
ヨキという男を手下としている。

ヨキ

喜兵衛の手足となって働く、大陸から来た寡黙で隠密が得意な男性。のちにウメを助けることになる。

隼人

ウメが銀山で蛇の寝ござを見つけたと聞いて、見に来た子供らのリーダー。
ウメから腕を噛まれて以来、彼女をライバル視している。

岩爺

銀堀をやっていると気絶えの病に罹ると言われるが、唯一長命で銀堀を続けている老人。
耳で銀脈が分かるといい、山師の喜兵衛すらも彼に敬意を払っている。

おとよ

銀堀の妻。夫がある事故で亡くなった後、ウメに世話になる。
のちにウメの助けとなる。

感想

この物語は、ある女性の一生を描いた物語。
それだけではないように感じました。

女性の身体には障るという間歩。
男性も長期間入っていると気絶えという病に冒されてしまうという間歩。
その存在はまるで、女性の子宮のように感じます。

産まれるかどうか、産まれても長く生きるか分からない子供を作る女性。銀脈があるかどうかわからない、あってもどれくらい続くかわからないまま掘り進める男達。この対比に、作者の愛情と、生命の美しさや生きることや豊かに暮らすことを熱望する人々の熱を感じました。

間歩は恐ろしい場所でありながら、慎重に扱わないと壊れてしまいます。
そんな描写も、間歩に女性を感じる部分だったのかもしれません。

銀という宝を求めて自分の命と引き換えにしてでも穴の中を掘っていく様子と、
ウメを男たちが犯していく様子
とが、
なぜか私には重なって見えたのです。

それは、ウメが自身の子供を育て、銀堀達を看取っている場面を読んでいると、ますますそう見えてきました。後半になるにつれて、ウメが男達を自身の中へ導いているような…間歩がまるで女性の胎内であるかのように感じられてしまうのです。

しかし、本書のすごいところは性行為の描写などが卑猥な音を帯びることがなく、むしろ人の生き物としての美しさや、生きて命を繋ごうとする強さを感じられるところです。

そして、男と女、外と内、死と生、銀堀の黒と血の赤などの対比の見事さも本作品の魅力の一つです。
特に、隼人とウメとのやり取りは、男女の違いや彼らの変化なども窺えて、読み応えがありました。

ウメと喜兵衛の関係は、一言では言い尽くせない部分がありました。
親子であり、上司と部下であり、夫婦のようであり恋人とも違う
そんな曖昧であやふやな関係性に不自然さを感じさせないのは、時代設定と舞台だと思います。

戦国から江戸になる混乱期で、いろんなところから多くの人々が入ってくる集落だからこそ、2人の関係性に読者は疑問を抱くことなく読み進められるのではないでしょうか。

本書では、闇深い間歩の中、蛇の寝ござという葉の葉脈、喜兵衛が探してくる特効薬の色が鮮やかに描かれています。これが、本書の一番の魅力であり、登場人物たちを活き活きと動かしているように感じました。

YouTubeで語りました

YouTubeでも語っています。

良かったら、こちらも見てみてください。

まとめ

芥川賞や直木賞、
どちらから読んだほうがいいですか?

こういう質問を、たまに受けます。

とも

ご自身がピンときた方、
書名やあらすじでお好きな方を先に読むといいのでは?

と思うのですが…読書初心者の方や、普段から芥川賞や直木賞を読んでいない方にとっては、どっちから読む方がいいのだろう?となってしまうようです。

普段、本を読まない方は直木賞を、

読書習慣があり、実用書などを読むことが多い人には芥川賞を勧めています。

これも個人によって差はありますが…。

今回紹介した『しろがねの葉』は、一人の女性の一生を扱った物語です。と同時に、石見銀山の話でもあります。

主人公のウメは、女性として銀堀を支える側として生きるのか、男性と一緒に銀堀として生きるのか、常に自身に選択を与えます。そして、自身の納得するまで諦めることはありません。

みなさんも、ウメのようにご自身の納得いく読書ライフを楽しんでみてください。

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