《子どもの場合、貧しさによって他の人と一緒のことができない、仲間になれないということが一番の問題です。》
《現代の家族の実態にあった制度づくりを行うためには、正しい現状認識のもと、専門家の知見を取り入れた対策を急ぐしかない。》
『チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~』
新井直之:著
TOブックス
チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~
概要
「日本の貧困問題に関心がある」「日本の貧困の実態を知りたい」人にオススメの新書。
「相対的貧困」と「絶対的貧困」
相対的貧困とは、周りの平均と比べて貧しいことを示しています。
絶対的貧困とは、家がない、食べるものがないという、人々がイメージする貧困ですね。
日本で問題となっているのは「相対的貧困」です。
しかし本書を読んでいると、相対的貧困の状態が続いてしまうと絶対的貧困に繋がってしまうことが分かってきます。
NPO法人が運営する教室で出会った子どもやその家族、スクールソーシャルワーカーを通じて実際に出会った青少年やその家族に取材をし、著者が感じたことを掲載しています。
親が騙されて借金を背負ったことが要因で中学に通えなかった少年。
両親の自己破産や借金、父親による搾取が原因でホームレスとなった青年。
母の死によって引きこもりになり、将来が見えなくなった女性。
これは、関係ない国の話ではありません。
私たちのすぐ隣で起きている事実なのです。
感想
日本の貧困問題というのは、知っているというだけで理解していなかったと、本書を通して痛感しました。
NPO法人が行っているサポートの仕組みは素敵なことだと感じました。
その一方で、青少年たちがこうなってしまう前に国がサポートできなかったのか…と思ってしまいますね。
貧困層には、家族に頼れない、家族に連絡を取れない等の事情がある人達が多いと書かれていました。読んでいくと、連絡を取ると逆に搾取されてしまいそうな家庭もありました。生活保護の改正、家族や親族という縛りの考え方を改めるべきだと思いました。
まとめ
本書は保護者の経済状況や死によって、人生が変わってしまった子どもやその家族を取材した新書です。
コロナ禍で経済格差や学力格差が広がっていることが問題として上がっています。
しかし、私たちはそんな問題をどこか他人事、違う世界で起きていることだと思っていないでしょうか。私は心のどこかでそう思っていたと反省しました。
社会が、生活保護に対して「怠けている」「甘えだ」などという考えや視線を持たなければ、生きていた命も笑顔もあったと思います。
本書を通して、「日本の貧困問題」について考え直してみてほしいです。
『チャイルド・プア2』も出版されています。あわせて読んでみてください。
チャイルド・プア2 貧困の連鎖から逃れられない子どもたち
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