皆さんは、「貧困」という言葉にどんなイメージを持ちますか?
自分とは関係ない遠い異国の話でしょうか?
それとも、身近にある問題でしょうか?
今回紹介する小説は、日本でも当たり前に存在する、誰にでも起こりうる貧困について扱ったものです。
- 日本の貧困について知りたい。
- 子どもや若者の貧困に興味がある。
- 暗い小説が読みたい。
これらの人にオススメです。
神さまを待っている(畑野智美:著)
※救いがあります。
《貧困というのは、お金がないことではない。頼れる人がいないことだ。》
《法律がわたしたちを本気で守ってくれるものならば、わたしは文房具メーカーで正社員になれたし、サチさんは生活保護をもらえる。》
日本の貧困について訴えた小説。
~あらすじ~
大卒の26歳の水越愛は、文房具メーカーで派遣社員として働いている。大晦日、約束されていたはずの正社員は反故にされ派遣切りにあう。次こそは正社員になりたいと求職活動をするが、上手くいかず失業保険の給付期間も終わり、住む家すらも失い漫画喫茶で寝泊まりする日々。
そんなある日、マユという女性に誘われて、お金を稼ぐために男性とお茶をする出会い喫茶に行くことになる。
「ワリキリ(売春)はしない」
そう決めていた愛だが、お金がないと生きていくことも、次の仕事も見つけられない。
~感想~
大学に行ったからといって就職できるとは限らない。
主人公の愛は、父親に愛されたことがなく、頼れる人もいない。友人は自分から切ってしまった。そんな状況で生きていくためには、どんなことでもすべきなのだろうけれど…私も愛のように一歩踏み出せないだろうと思う。
貧困について考えるには、私にはまだまだ想像力が足りなさすぎる。
本書を通して、子どもの貧困、大人の貧困、それは本人の自己責任などではなく、主に社会の思い込みや偏見によって作られるのだろうと感じた。
読了後、なんとも言えない感情が心と頭に湧いては消えていた。
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価格:836円 |
東京難民(福澤徹三:著)
※救いないです。
《いまの時代、ひとつまちがえりゃ、誰だっておれたちみてえになるかもしれねえのに、自分だけは大丈夫だって信じてるんだもの。》 ~あらすじ~ 主人公はいわゆるFラン大学に通う時枝修。 見栄っ張りで小心者の父とマイペースな母の反対を押し切って東京で一人暮らしをしている。 ある日、大学に行った彼は、事務局で「学費が滞納されて除籍になっています」と言われる。 恋人には強がり、友達には即金性のある働き口を頼むが見つからない。あったとしてもかなりブラックで辞めてしまう。 ついにはアパートも追い出され、両親には連絡がつかない。 ネットカフェで寝泊まりをしながら、さまざまなアルバイトをしながら貯金を試みるも失敗し続ける。 彼が最後に行き着いた先は……。 ~感想~ ある日突然両親が音信不通となり、大学だけでなくアパートからも追い出されるというショッキングな出来事から始まる本書。 修の大きすぎる自尊心や今だけを見る考え方は、この社会を生きるには甘すぎるということを彼を人生を通して読者に突きつけてきます。そして、彼の無知さや人生を舐めている感じは、今の若者を現しているようでした。 どんな大学を出ていても出ていなくても、高い理想があってもなくても、ホームレスになるし、今日を生きるお金に困ることはある。そしてそれは、誰にでも起こりうることだと改めて感じました。 また、ホームレスの人たちをバカにしたりナマケモノと嘲ったりする風潮や社会の雰囲気が、若者による暴力などさまざまな問題を起こしているのだと本書を通して再認識しました。 数年前の本ですが、今にも通じるものだと思います。
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希望が死んだ夜に(天祢涼:著)
※救いってなんだろうって感じになります。
《そうか。あたしはまだ、本当に困っていなかったのか。》
《希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国》
『希望が死んだ夜に』
天祢涼:著
文藝春秋
~あらすじ~
女子中学生が同級生を絞め殺したという事件が起きた。
被疑者は冬野ネガ。夫の暴力に耐えかねた母が離婚した後から母子家庭。母はトラウマのせいで良く働けない。
被害者は春日井のぞみ。吹奏楽部に所属し、先生や生徒にも人気者の優等生。
刑事の真壁と生活安全課の仲田は捜査を進めるうちに、担任の三浦のネガに対する無関心、ネガの家庭の状況、そしてネガとのぞみの関係性についてが分かっていく。
ネガは本当にのぞみを殺したのか、その理由はなんだったのか。
切なすぎるラストに誰も耐えられない。
~感想~
読了後、私は帯やベルさんが紹介していた通り、切なさと衝撃で言葉が出ませんでした。
冬野母子の周りにも、救おうとしてくれた人はきっと居た…はずです。
しかし、「生活保護」に対する思い込みや「生活保護バッシング」によって、救いの手は閉ざされてしまいます。そのせいでネガは中学生にも関わらず働く必要に迫られ、ネガの母はどんどんネガの稼ぎに甘えるようになる場面は逃げ場がなくなっているように思えました。
ネガが諦めていくにつれて状況は悪くなり、周りはネガのことを見放していくような印象を覚えます。小説なのに、助けてあげたいと思いました。きっとそれすらも自己満足なのかもしれないと感じました。
ネガの母が「ネガは若いから」という理由を口にした時、私は戦慄した。
表面だけを見て人を判断すること、生活保護という言葉や印象だけで人を批判すること、それらの恐ろしさを本書を通して感じた。
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価格:825円 |
おわりに
バブル崩壊、リーマンショック、コロナ不況…。
日本総中流は昔の話となり、今や中流層の人達の生活水準や給料が下がっている。
この30年で給料は下がり、物価は上がった。
貧困なんて自分には関係ない。
今回紹介した小説を読んで、関係ないなんて思えなくなった。
皆さんもぜひ図書館でも電子書籍でも、紙の本でもいいので、どれか1冊でも読んでみてください。
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