2022年4月に2022年本屋大賞受賞作品が発表されました。
皆さんはチェックされましたか?
今回は、読書司書ともが本屋大賞ノミネート作品たちを数冊読んだ感想を書いていきます。
本屋大賞1位『同志少女よ、敵を撃て』
あらすじ
本書は直木賞候補作品であり、2022年本屋大賞第1位の作品です。
舞台は第2次世界大戦下のロシア。
モスクワ近郊の農村で、猟師として母と暮らす少女・セラフィマ(フィーマ)。
彼女はある日、ナチスドイツ軍により愛する村と母を殺されてしまう。
そこにやって来たソ連赤軍のイリーナに選択を迫られる。
「戦いたいか、死にたいか」
彼女はソ連赤軍の狙撃兵になることを決めたフィーマ。
フィーマが連れて行かれた訓練場には、彼女と同じように孤児となった少女たちの姿があった。
多くの少女が脱落していき、狙撃兵として残ったのはフィーマを含めてたったの5人。
戦争が激化するにつれて、彼女たちの見る景色も苛烈を極めていきます。
刺さった言葉たち
私はもう、国家だのの都合に振り回されるのはうんざりだ。(アヤ)
強いアヤだからこそ言える言葉です。
この後の展開を思うからこそ、より心に響きました。
愛する人を持つか、生きがいを持て。(リュミドラ)
実在する人物の言葉です。
この言葉は、狙撃兵以外でも、生き延びるのに必要なんじゃないかと思います。
感想
本格的な戦争小説であり、アクション小説でもありました。
少女が主人公の物語なので、女性の思いを知る物語でもありました。
今、戦争を知らない世代が読むべき作品ではないでしょうか。
本書を読み終えて、一言では言い尽くせない、なんとも言えない思いが込み上げてきました。
随所随所でこのシーンの感想を言いたい!そんな気持ちにさせてくれる小説でした。
こちらの作品も、併せて読むことをオススメします。
赤と青とエスキース
あらすじ
この作品は、全部で5つの物語が収録されている。
レイというオーストラリアに来た留学生が描いてもらった「絵画」をめぐる5つの「愛」の物語が展開します
レイとブー。
画家と額縁職人。
漫画家の巨匠と大型新人。
パニック障害になった女性と元カレ。
そして
エピローグ。
美しい絵画のような物語。
青山さんらしい短編連作小説。
最後に全てがつながり、もう一度読みたくなる物語。
刺さった言葉
人生は何度でもあるけど、それを経験できるこの体はひとつしかないのよね。(オーナー)
ハッとさせられる言葉でした。
人生一度きりなんていうけれど、確かにそんなの怖すぎる。
やり直しの効かないものなんてないんだと勇気をもらえる。
気持ちいいなと素直に思えるものがいつもそばにあるって、すごく豊かなことだよ。(村崎)
当たり前にあるものって、その良さにはなかなか気付かないんですよね。
感想
オーナーのような考え方で、ブーのような軽さで生きたいと思いました。
スモールワールズ
あらすじ
165回直木賞候補作の一つです。
本書は短編で、老若男女さまざまな人々が通り過ぎていくような感覚になる小説です。
まるで、自分がどこかのカフェにいて、もしくは窓口にいて、色んな人の人生模様を覗き見ているような、そんな小説の書き方が魅力でした。
【目次】
「ネオンテトラ」
「魔王の帰還」
「ピクニック」
「花うた」
「愛を適量」
「式日」
刺さった言葉
理由とか原因とかを他人に紐づけてると人生がどんどん不自由になる
原因他人論ってやつですね。
今の自分があるのは、過去の自分の選択が原因だということを肝に命じておきたいと感じました。
感想
主人公だけでなく、彼らに関わってくる人々にも注目して欲しい本書。
短編ながら、一本の映画を観ているような気分になりました。
正欲
あらすじ
《人間がずっとセックスの話をしているのは、常に誰かと正解を確かめ合っていないと不安なくらい、輪郭がわからないものだからだ。》
《頼んでもいないのにとっておきの秘密を明かしてきておいて、お望み通り聞き役に徹していたらあるとき突然そのお返しがないとキレられる。》
本書は不思議な独白から始まる。
息子が不登校になった検事・啓喜。
男性や恋愛が苦手だが初めて人を好きになった女子大生・八重子。
たった一つの秘密のために人と親しくなりたくない会社員・夏月。
彼ら視点で展開する本書は、「多様性」「新しい時代」といった言葉がキーワードのように散りばめられている。
そしてある事件をきっかけに、「多様性」を認める社会にとって不都合なことが小さなことだが、次々と起こっていく。
刺さった言葉
人間がずっとセックスの話をしているのは、常に誰かと正解を確かめ合っていないと不安なくらい、輪郭がわからないものだからだ。
性的な話をしているのに深く考えたくなります。
繊細な話をしているのに、もっと声を大にして誰かに話したくなりました。
頼んでもいないのにとっておきの秘密を明かしてきておいて、お望み通り聞き役に徹していたらあるとき突然そのお返しがないとキレられる。
これってあるあるですよね。
女性ならわかってくれる人、多いと思います。
女性の人間関係って大変だなと思いました。
感想
マイノリティーとはなんなのか。
マジョリティとはなんなのか。
多様性を認める。ことの傲慢さ。
さまざまな性的指向を知ることの必要性と不要性。
人と同じであること、共感できること、同情できること。
これらはちょっとした奇跡であること。
そんなことを考えさせられた小説でした。
星を掬う
あらすじ
元夫から搾取される生活を送る千鶴は、母との夏の思い出をラジオに送り、準優勝として賞金をもらいます。
彼女は母から捨てられる前の思い出を流したことを後悔しつつも、賞金の5万円でどうにか生活ができると安堵していました。
そして、ラジオに出したことがきっかけで、千鶴を捨てた母・聖子と再会し、一緒に暮らすことに。
そこには、聖子をママと慕う恵真、娘に捨てられた経験のある彩子が共に暮らしていたのです。
刺さった言葉
わたしの人生は、私のものだ!(千鶴)
当たり前だけど、なかなか言えない言葉ですよね。
言われてハッとするセリフです。
ひとにはそれぞれの人生がある。母だろうが親だろうが、子どもだろうが、侵しちゃいけないところがあるんだ(聖子)
親になる前に、心に刻んでおきたい言葉です。
感想
DVを繰り返す元夫の弥一がなぜあんなに千鶴に固執したのか…きっと千鶴の心が「仕方ない」と諦め、搾取されることを許してしまっていたからじゃないかなと思いました。
最後に書名の意味が分かって、なんだか胸熱でした。
自分の不幸は親のせいでも誰のせいでもない。ただただ、自分に責任がある。
そんな当たり前だけど、なかなか意識しないことを教えてくれる小説でした。
さすが、本屋大賞ノミネート作品。
最後に
全作品を読んだ訳では無いのですが、今回の本屋大賞ノミネート作品はどれも面白かったように思いました。
去年のノミネート作品もそうでしたが、社会の問題や人々が見ないふりをしている問題が作品の根底に流れているように感じました。
本屋大賞を機に映画化やドラマ化などする作品も多いので、メディア化する前に原作を読んでみませんか?
ちなみに、今回紹介した作品はAmazonオーディブルでも配信されています。
この機会にぜひ聴いてみてください。
コメント
コメント一覧 (1件)
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